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国立がん研究センター 東病院
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プロジェクトの成果

SCRUM-Japanの成果

産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクトSCRUM-Japan(スクラム・ジャパン)は、進行したがんに対する薬剤での標準的な治療が無効となった患者さんに、新しく開発された有効な薬剤をいち早く届けるためのプロジェクトで、参加患者さん、参加医療機関の数や連携する製薬企業数など世界でも最大規模です。
2015年に設立されてから、2019年の第3期プロジェクトが開始されるまで、がん患者さんへ有効な新薬をいち早く届けるとのミッションのもとで多数の成果をあげてまいりました。その中から主な成果について以下にご紹介します。

希少頻度の遺伝子変化を見つけ出し、患者さん個々に最適な薬剤を投与 ─ 遺伝子変化に適合する新薬企業・医師主導治験への登録

SCRUM-Japanプロジェクト開始以来、1万例(肺がん約5400例、進行消化器がん約5700例)を超えるがん患者さんの腫瘍組織の遺伝子スクリーニングが実施されました。その中から希少頻度の遺伝子変化を持つ患者さんを見つけ、その変化に適合する新薬の医師主導治験、企業治験へ参加することによって患者さん個々の最適な薬剤投与につなげています。患者さんにとっては特段の費用負担なく、保険適用未承認段階の遺伝子パネル検査とその解析結果に適合する最新の薬剤を受ける機会を最大化することができています。

新しい薬と体外診断薬を、迅速かつ確実に世の中へ送り出す ─ 薬事承認の取得

SCRUM-Japanでの遺伝子スクリーニングや海外での同様のスクリーニングにより、適合する新規開発薬剤の企業・医師主導治験で投与を受けた結果、明らかな有効性と安全性が示された5種類の医薬品(6適応)が日本で薬事承認され、保険償還が得られる形で全国の患者さんに届けることができました。さらに、SCRUM-Japanで得られた臨床・ゲノム情報を利用することで6種類の体外診断薬が薬事承認され、こちらも全国で使用可能となっており、日本でのがんゲノム医療の確立に貢献を果たしています。

オールジャパンで取り組む ─ 医師主導治験全国ネットワークを構築し、産学での臨床ゲノムデータ共有システムの構築

SCRUM-Japanでは患者さんへの有効新薬へのアクセスを最大化するため全国規模の遺伝子スクリーニングプラットフォームを多くの国内がんゲノム医療中核施設等と連携・有効活用しています。現在、全国の9拠点施設と連携し合計18本の医師主導治験を実施中で、様々な情報を各施設間で共有して一刻も早く患者さんに有効薬剤が届くよう努力しております。さらに、SCRUM-Japanに登録された臨床・ゲノム情報はセキュアな環境で全国66医療機関参加製薬企業17社との間で共有・二次利用を行い、新しいがん新薬の創出や様々ながん治療の研究に広く利用されて国内の患者さんの治療成績向上に少しでも貢献できるようなシステムを構築しております。

臨床・ゲノムデータを活用する ─ 産学共有による新たな創薬・臨床開発

上記で構築したSCRUM-Japan臨床・ゲノム共有データベースを活用し、新しい薬剤耐性メカニズム・治療標的の発見や次の創薬を目指した取り組みや、企業との共同による新規医師主導治験が国内複数施設で開始されるなど、より新しい有効な薬剤の開発の推進に大きく貢献しています。

新たなエビデンスの構築 ─ 国際的データとの統合と解析

SCRUM-Japanでは、すでに1万例を超える臨床・ゲノムデータを有していますが、個々の遺伝子変化の頻度は多くは数パーセント以内であり、かつ一つの遺伝子異常でも複数のサブタイプに分類されることも多く、最適な薬剤がどれかを突き止めるにはどの国でも国内のデータだけでは不十分な状況です。患者さんに真に有効かつ安全な薬剤を届けるため、SCRUM-Japanでは欧米やアジアの国々と最新のデータを国際統合し、世界規模でのプレシジョンメディスンに大きく貢献する国際的なエビデンスを構築しています。

さらなる発展へ ─ リキッドバイオプシーの実用化を目指して

腫瘍組織の遺伝子スクリーニングは、ときに腫瘍組織を得るために生検が行われ患者さんの負担になります。SCRUM-Japanでは、患者さんの血液から腫瘍の遺伝子スクリーニングを行うリキッドバイオプシー研究を2018年から開始しています。従来の腫瘍組織の遺伝子スクリーニングと比べ、結果が分かるまでの時間も短縮され、以前よりも多くの患者さんが新薬企業・医師主導治験に参加することができています。また、がんの遺伝子変化をリアルタイムに知ることができるため、新たな研究や治療薬の開発につながる可能性があります。