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国立がん研究センター 東病院
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SCRUM-Japan メッセージ

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“有効で安全ながん治療薬の開発目指す
産学連携プロジェクト4期の新たな挑戦”

SCRUM-Japan事業代表者
国立がん研究センター東病院長
大津 敦

SCRUM-Japanの目的

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SCRUM-Japanは、最新の遺伝子パネル検査を実施し、がんの患者さんに最適な治療薬を届けることを目指して、2015年にスタートした産学連携プロジェクトです。現在は第4期に突入し、肺がんの遺伝子変化を調べる「LC-SCRUM-Asia(エルシー・スクラム・アジア)」と、固形がんの遺伝子などの変化を調べて治療開発に貢献する「MONSTAR-SCREEN-2(モンスター・スクリーン・ツー)」という2大プロジェクトを柱に、全国260病院と製薬企業17社が共同研究を進めています。ラグビーでスクラムを組むように、医療機関と製薬企業が一丸となって、遺伝子などのスクリーニング検査を進め、有効かつ安全ながん治療薬を一つでも多く迅速に全国の患者さんへ届けるとともに次世代のがん治療薬の開発を促進するのが、このプロジェクトの使命です。

SCRUM-Japanの特徴

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本プロジェクトでは固形がんで薬物療法の対象となる患者さんが、世界で最も品質の高い遺伝子パネル検査やリキッドバイオプシー(血液を用いてがんの遺伝子変化を検出する検査)を受け、最適な治療薬を選択したり新薬の治験に参加したりする機会を提供しています。100種類以上のDNAやRNAなどの異常の有無を一度に調べる遺伝子パネル検査やリキッドバイオプシーは非常に高価ですが、その費用は製薬企業や公的資金による研究費で賄われ、患者さんの自己負担はありません。世界に先駆け、一人ひとりの患者さんに合わせた究極の個別化治療の実現を目指したいと考えています。

そして、もう一つ、本プロジェクトの大きな特徴は、オールジャパン体制でがん治療薬・診断薬の開発を進めていることです。全国260病院の連携によって、通常なら被験者の募集に時間がかかる、非常にまれな遺伝子の異常を標的にした治療薬の開発が、これまででは考えられなかったスピード感で実現できています。

SCRUM-Japanのこれまでの成果

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第1期(2015年)から第3期の6年間で、2万人以上の患者さんが本プロジェクトで遺伝子パネル検査を受け、67の治験(うち医師主導治験は21試験)を実施しました。これまで30治験が終了し、11剤13適応で薬事承認を取得、2剤が薬事承認申請中です。また、本プロジェクトのデータによって7種類の遺伝子診断検査キットが薬事承認を取得し実用化されています。2021年3月に薬事承認された固形がんのリキッドバイオプシーの開発も我々のプロジェクトの成果の一つです。

新薬や検査キットの開発には非常に長い年月がかかり、期待通りの結果が出ない治験も多い中で、短期間にこれだけの成果を出した研究プロジェクトは、世界でも例がないと自負しています。本プロジェクトに参加いただいた患者さんとそのご家族には感謝の気持ちでいっぱいです。登録いただいた患者さんの情報はレジストリとしてデータベースに蓄積されており、今後も新薬の開発や薬事承認申請の際に活用される予定です。

SCRUM-Japan第4期と今後の展望

2021年6月から第4期の新プロジェクトがスタートしました。LC-SCRUM-Asiaでは、東南アジアへもスクリーニング基盤を拡大し、遺伝子異常の網羅的解析や検査の迅速化に取り組むことで、アジアにおける治療・診断薬開発や個別化医療の確立を目指します。また、MONSTAR-SCREEN-2ではAI(人工知能)なども活用し、遺伝子だけではなく、RNAやタンパク質の変化も調べることで治療薬や診断薬の開発を目指す世界最先端の試みに挑戦します。がんの遺伝子などの異常だけではなく、細胞膜のたんぱく質発現や腫瘍の周囲の免疫応答などにも注目することで、抗体-薬物複合体(ADC)などを始めとした次世代の治療薬開発も進むのではないかと期待しています。より効果が高く安全ながん治療薬と精度の高い検査キットを世界に先駆けて日本の患者さんに届けることが、SCRUM-Japanのモットーです。これからも情熱を持ってより精力的に、プロジェクトを進めていく所存です。