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MONSTAR-SCREEN(モンスター・スクリーン)メッセージ

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“世界一の診断・治療を日本の患者さんに届けるために
AIを活用したマルチオミクス解析を開始”

MONSTAR-SCREEN 研究代表者
東病院 副院長、医薬品開発推進部門長
吉野 孝之

MONSTAR-SCREENとは

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肺がん以外の固形がんの再発・転移で薬物療法を受ける患者さんに、一人ひとりのがんのタイプに合わせた最適な治療を届けることを目指したプロジェクトです。主に、消化器がん、皮膚がん、乳がん、婦人科がん、泌尿器がん、頭頸部がんの患者さんを対象にしています。MONSTARは「Max Onco Network with STARs」を略した造語で、患者さんのために、がん(Onco)治療を担うスター医師たち(STARs)と世界最大のネットワークを構築するという意味を込めました。

本プロジェクトの前身であるGI-SCREEN-Japan(ジーアイ・スクリーン・ジャパン)は、消化器がんの患者さんに、がんの遺伝子変化に合わせた「最も有望な治療を世界で一番早く届けたい」という思いから2014年2月にスタートしました。GI-SCREEN-Japanでは、約5年間で3つの新薬と3つの遺伝子検査診断キットを保険診療で使えるようにするなどの成果を挙げました。この経験を生かし、消化器がんだけではなく他の固形がんの患者さんにも、遺伝子などの変化に基づく最適な治療を届けたいと考え、対象を拡大して進化させたのが今のMONSTAR-SCREENです。第3期SCRUM-Japanでは「MONSTAR-SCREEN」として、2年間でさらに2つの新薬、そして、血液を用いてがんの遺伝子の変化を調べるリキッドバイオプシー検査キットなどの保険適用に貢献しました。現在、本プロジェクトには、研究体制が整っており治験などの実施が可能な全国31病院が参加しています。

MONSTAR-SCREEN-2の新たな挑戦

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GI-SCREEN-JapanとMONSTAR-SCREENでは、がんの遺伝子の傷であるDNAの変化を調べる、いわゆる「ゲノム解析」を基にがん治療薬などの開発をしてきました。しかし、がんの発生や増殖の原因となる異常はDNAだけではなく、RNAやタンパク質などいろいろなレベルで生じています。SCRUM-Japan第4期から始動した「MONSTAR-SCREEN-2」では、DNA、RNA、タンパク質といったさまざまな分子レベルでの変化を網羅的に調べる「マルチオミクス解析」という新たな技術を基に、より最適ながん治療薬を患者さんへ届けることを目指します。

2500人の再発・転移固形がんの患者さんに
マルチオミクス解析を実施

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MONSTAR-SCREEN-2のマルチオミクス解析では、患者さんのがんの組織と血液を用いて、全遺伝子(約2万2000遺伝子)のDNA、RNA、タンパク質の変化を網羅的に調べ、その結果を基に最適な治療や治験の選択肢を提示します。まずは、薬物療法の治療歴のない再発・転移固形がん(肺がん以外)の患者さん1500人が対象です。ある程度体制が整ったら、初回の薬物療法を受けた再発・転移固形がん(肺がん以外)の患者さん1000人にもマルチオミクス解析を受けていただく予定です。

薬物療法終了後に、もう一度、血液を用いたリキッドバイオプシーによってマルチオミクス解析を行い、DNA、RNA、タンパク質発現の変化も確認します。なお、このマルチオミクス解析の検査費用に関して、患者さんの自己負担はありません。遺伝性腫瘍に関連する遺伝子が見つかった場合に必要になる詳細な遺伝子検査もプロジェクト内で行います。

現在保険診療で使えるがん遺伝子パネル検査によるDNA解析では、その結果を基にした治療ができる患者さんは10%程度です。現行の遺伝子パネル検査では評価していないDNA、そしてRNA、タンパク質まで調べることで、治療につながる患者さんが1.5~2倍以上増えると想定しています。マルチオミクス解析で得られた膨大なデータをAI(人工知能)で分析することで、がん細胞と周囲の環境を含めたがんの分子生物学的な全体像を明らかにし、これまでとは異なる視点でのがん治療薬の開発につなげたいと考えています。これほど大規模なマルチオミクス解析研究は世界でも例がなく、国際的にも非常に注目されています。実際にMONSTAR-SCREENは、2021年2月より国際的ながんゲノムプロジェクト「ICGC-ARGO」への参画をしており、グローバル展開を進めています。

MONSTAR-SCREENが見据える究極の目標
患者さんとご家族にMore than Happyを届ける

我々の最終ゴールは、がんが再発・転移しても治る病気にすることです。MONSTAR-SCREEN-2になっても、SCRUM-Japan開始当初からの「日本の患者さんに最も有望な薬を世界一早く届けたい」という思いに変わりはありません。一人でも多くの患者さんとご家族に幸せを届け、笑顔になっていただくためにも、新しい発想や技術をいち早く取り入れて世界のがん治療をリードし、ダイナミックにフレキシブル、かつ貪欲にトライを繰り返し目標に向かって前進したいと考えています。